思い出の花壇
投稿者:マックS◆[fbd647f]
佐恵子と夫の伸男は、今度移り住む新居の庭に作る花壇について話し合っていた。
佐恵子は三角の花壇と、四角の花壇の二つを作りたかった。
しかし伸男は、スペース的に二つは無理だと言った。
そして、二つ作るのに無理があることは佐恵子も承知していた。
佐恵子には、二つの花壇に思い入れがあった。
幼い頃、佐恵子が住んでいた家の庭には、庭の角を利用した三角の花壇と、庭の中央に構える四角の花壇があった。
三角の花壇には、今はもう他界している母親が自分の好きな花を植え、四角の花壇には佐恵子が自分の好きな花を植えて育てていた。
しかし父親の経営していた会社が倒産し、その家は借金の形に取られてしまった。
幼かった佐恵子は、小さなアパートに引っ越した後しばらくして、花壇のことが心配で様子を見に行ったが、その時すでに花壇はなくなっていた。
その時の何とも言えない悲しい気持ちは、今もよく覚えている。
「三角か四角のどちらをとるか、この出張の間に決めておいてくれ。」
伸男はそう言って、5日間の出張に出かけてしまった。
佐恵子にとっては苦渋の選択であったが、自分が世話をしていた分当時の記憶が鮮明に残っている四角の花壇をとることにした。
そしてそのことを、出張中の伸男にメールで伝えた。
数十分後、伸男から返事のメールが届いた。
「以前言ってた簿記か何か?それとも趣味の?」
佐恵子には全く意味が分からなかった。
しばらく考えた後、佐恵子は自分が送ったメールを再確認した。
佐恵子はメールしたはずであった。
「四角をとることにしたわ。」
しかし、実際に送っていた文はこうなっていた。
「資格をとることにしたわ。」
変換ミスであった。
※ 文中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。
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